アルコール依存症
ひとことで言うと、「家族や、仕事、趣味などよりも飲酒が最優先となる状態」で、飲酒のコントロール(飲む時間、飲む量、飲む状況)ができず、手指振戦や発汗などの離脱症状が見られます。そして健康問題などの原因が飲酒だと分かっていながらも、飲酒を止めることができません。
【アルコール依存症のICD-10診断ガイドライン】
過去1年間に以下の項目のうち3項目以上が同時に1ヶ月以上続いたか、または繰り返し出現した場合
①飲酒したいという強い欲望あるいは強迫感
②飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難
③禁酒あるいは減酒したときの離脱症状
④初めはより少量で得られたアルコールの効果を得るために、使用量を増やさなければならない耐性の証拠
⑤飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が延長
➅明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒
【患者数】
2013年に厚生労働省が行った調査によると、推計で109万人(男性95万人、女性14万人)の結果でした。この数字はアルコール依存症の治療が必要な患者数ですので、その予備軍を含めると倍以上になるのではないでしょうか?
さらにこの109万人の内、現在治療中の人はわずか8万人だそうです。治療の必要があるのにもかかわらず病気を放置している人がとても多いということです。2003年に行なわれた同じ調査では80万人(男性72万人、女性8万人)という結果でしたので、10年間で29万人もが増えたことになります。
【アルコール関連問題】
飲酒問題は、本人だけに問題が生じるのではなく、家族や社会に大きな影響を及ぼし「アルコール関連問題」と言われます。これらの問題は、お酒の飲み方を変えないかぎり、周囲を巻き込みながら増大していきます。
☆社会的損失
飲酒問題による社会的損失は年間4兆1483億円に達する、という厚生労働省研究班の推計があります。飲み過ぎによる、肝臓病・脳卒中・がんや怪我などの治療に1兆226億円で、病気や死亡による労働損失と、生産性の低下などの雇用損失をあわせて3兆947億円。自動車事故・半座位・社会保障などに約283億円と言われています。しかし、家庭や子どもへの影響など金額に換算しにくい問題もたくさんあります。
☆本人の身体・心への影響
臓器障害、生活習慣病、がん、外傷、うつ病、睡眠障害、自殺、認知症など
☆家族への影響
配偶者への暴力(DV)、子どもの虐待、家庭崩壊、胎児・乳児への影響、世代間連鎖など
☆地域社会への影響
飲酒運転、生産性の低下、失業問題、貧困問題、さまざまな犯罪、未成年の飲酒、アルコールハラスメントなど
【離脱症状】
何らかの理由で飲酒を止めると、体内のアルコール濃度が下がり様々な自律神経症状や情緒障害、手の震え、幻覚などの症状が出現します。これを「離脱症状」と言い、起きる時期によって「早期離脱」と「後期離脱」に分けられます。離脱症状による不快感から逃れるために、さらに飲酒を続けることがあります。
☆早期離脱
飲酒を止めて数時間で出現し、手や全身の震え、発汗、不眠、吐気、嘔吐、血圧の上昇、不整脈、イライラ、集
中力の低下、幻覚(虫や小動物など)、幻聴など
☆後期離脱
飲酒を止めて2~3日で出現し、幻視や見当識障害、興奮、発汗、発熱、震えなど
【自助グループ】
同じ悩みや問題を抱えた人たちが定期的に集い、言いっぱなし、聞きっぱなしを原則としたミーティングを自助グループと言い、現在では様々なグループがあります。アルコール依存症に関連する自助グループは「AA」と「断酒会」です。
☆AA(Alcoholics Anonymous):無名・匿名のアルコール依存症者
1935年にアメリカで誕生した。原則として本人だけの参加で12の伝統という原則に則り、12ステップを実践して回復を目指す。ミーティングが中心で参加者はニックネームで呼び合い、役員などは置かずメンバーの献金によって運営されている。
☆断酒会:全日本断酒連盟
AAをモデルに1960年代に日本で誕生した。本人だけではなく家族なども参加できる。組織化され役員がおり、会員の会費によって運営されており、会員(本人・家族)の体験談を中心に行われる。
☆自助グループの機能
①ミーティング(AA)、例会(断酒会)に参加することで飲まない時間を過ごせる
②仲間の存在が孤独や傷付いた感情を癒す
③回復している仲間から希望と勇気を得る
④仲間との付き合いで対人関係能力を育てる
➄仲間を通して自分を見つめ直す
➅失われた自尊心が回復できる
⑦苦しんでいる人たちに自らの体験を伝えることが、自分の回復につながる
【抗酒剤】
アルコール依存症の再発予防の一環として補助的に使用する薬で、服用すると肝臓の分解機能が一時的に低下し、お酒に弱い体質を作りだします。これはアルコールの分解過程で発生するアセトアルデヒドという物質の分解を阻害し強制的に悪酔い状態となるのです。抗酒剤を服用した後に飲酒すると普段より増して顔が赤くなったり、頭痛、吐気、胸部圧迫感、息苦しさ、めまいなど不快な症状が出現します。アルコール依存症では強烈な飲酒欲求が起こります。しかし、抗酒剤を服用していると、飲酒後に不快な症状に苦しむのを恐れ飲酒を抑えることにつながります。通常は1日1回、朝に服用します。
☆ジスルフィラム(商品名:ノックビン)帯黄色粉薬
服用後に効果が得られるまでに数時間を要しますが、持続性は7日間程あります
☆シアナミド(商品名:シアナマイド)無色透明の水薬
服用後数分で作用効果が得られますが、24時間程で効果はなくなります
☆抗酒剤服用の利点
①服用することで飲酒欲求が抑えられ、気分が楽になり精神的にも落ち着く人もいます
②家族が安心する(当事者が抗酒剤を服用すると、今日1日は飲酒しないだろうと安心する)
【事務所】
メンタルサポートyuki
〒885-0076 宮崎県都城市西町3735-1
TEL:0986-66-5136 mail:ms-yuki@btvm.ne.jp